「ぼおっと」のススメ|インドで過ごした時間

ヨガ

先日のアーユルヴェーダ講座で、「インドには日本と比べて『ぼおっと』過ごす人が多い」という話題が出ました。15年前に一度だけ訪れた経験がありますが、私もこのお話には強く共感しました。

インドの時間感覚が日本とまるで違うことは、以前からヨガ仲間や先生方から聞いていました。しかし、実際に現地であの「のんびりさ加減」に触れたときは、かなりのカルチャーショックを受けました。私が訪れたゴアはリゾート地で、(今も多分そうでしょうか?)特にのんびりした人が集まる場所だったせいか、ただ佇んでいる人があちこちにいるのがとても印象的でした。

私自身は、日本に夫と息子を残し、ヨガを学ぶために一人でインドへ行ったので、のんびり過ごすつもりは全くありませんでした。この貴重な機会に学べることをすべて吸収し、精神的に強くなって家族に還元しようと意気込んでいたのです。ノートにはびっしりと「やることリスト」を書き込んでいました。

ところが、次第に私も「ぼおっと」する時間に染まっていきました。正確には、ヨガ以外の予定を立てていなかったため、そうする以外になかったのですが。(しばらくして日本人の仲間たちと出会うまでは…)

インドでの一日は、朝6:30から1時間半ほどのヨガで始まりました。8時にはアーサナを終えて部屋に戻り、洗濯を済ませてからカフェで朝食。あとは夕食まで、場所を転々としながら、ただ海を眺めて過ごしていました。浮かんでは消えていく思考を、ただ見送るだけの、何のジャッジもない時間。日本では考えられないほど、ただ「ぼおっと」する時間を堪能していたのです。

その中で、何度も「家族を置いてきて、これでいいのだろうか?」という罪悪感が湧きました。しかし、繰り返すうちに「この『ぼおっと』する時間こそが極上の贅沢ではないか?自宅でもこの時間を作れないだろうか?」と考えるようになったのです。ヨガと「ぼおっと」が、心身の調子を整えてくれると、直感的に理解できました。また、家族への罪悪感を消すには、何度もインドに通うのではなく、北見に住んでいながら健康的に過ごす習慣を作るのが良いとも思いました。

強さを手に入れようと意気込んでいた心は、やることリストとともに、アラビア海の向こうへと消えていきました。代わりに、シンプルに生きる勇気が芽生えたのです。「身軽に生きる方が、自分にも周りにも優しい」という考え方が私の中に生まれたのは、間違いなくこの経験がきっかけでした。

帰国直後は、頭が冴え渡り、「私は仕事ができる人なのでは?」と勘違いするほど普段の業務が捗りました。以前の10倍ほどは効率が上がり、自宅に持ち帰る仕事量を減らして帰宅できる日が増えたのです。時間が経つにつれて効果は薄れていきましたが、「心身がリフレッシュされた状態が、仕事のパフォーマンス向上に繋がる」と実感できた出来事でした。

それ以来、「無駄を削ぎ落とし、必要なことに集中し、しっかり休む」ことを意識しています。日本社会ではこの考えを続けるのが難しく、フルタイムの仕事を辞めて、今のような生き方に落ち着いてしまっているのですが(笑)。

最近では、企業が瞑想時間を取り入れるケースも増えています。「余白の時間を確保することで、パフォーマンスが向上する」という効果は、科学的にも証明されていますよね。でも、まだまだ「ちょっと瞑想してきます♡」とか「『ぼおっと』したいです♡」なんて言おうものなら、「バカ言ってないで仕事しなさい!あれもこれもそれもやったほうがいいでしょう?」とあっという間に大事な仕事や家族のために作っていた余白を埋められてしまう…。10年後には変わっているのでしょうか?

とはいえ、今この瞬間からでも、無理のない範囲で周りと調和しつつ、時間の使い方を見直すことはできるはず。
私自身、2025年は「ぼおっと」のススメをもっと生活に取り入れていこうと思っています。興味のある方は、ぜひ一緒にトライしてみませんか?少しのデジタルデトックスと共に。